アメリア・アレナス鑑賞教育研修会
2007.4.7(土)〜4.8(日)

menu:1 まず大人が実践  
    2 小学校5,6年生の鑑賞
3 質疑応答  
4 講演(上野行一先生 高知大学)

     主催:東御市梅野記念絵画館 東御市
        長野県信濃美術館 長野県
     後援:長野県美術教育研究会
    企画:at-museum(淡交社)
    協力:三澤一実(文教大学)、橋本光明(信州大学)
       上野行一(高知大学)、奥村高明(文部科学省)
       木下晋(作家)、浅見俊哉(文教大学)

 長野県信濃美術館との共催により鑑賞教育の世界的第一人者アメリア・アレナスさんを講師に「鑑賞教育研修会」を開催しました。アレナスさんが提唱するのは「対話型鑑賞」というもので、難しい美術史の知識や専門用語などとは一切関わりのない、鑑賞者の自由な印象を重視したものです。簡単にいえば「絵を見て、考えて、話す」という実にシンプルな手法です。
 学習指導要領に「鑑賞」ということがしっかり明記されているにも関わらず、現場の先生の多くがどのように授業を行っていいか迷っている現状があります。先生方は「美術鑑賞は特別な知識や事前の学習が必要だ」という先入観に支配されているのです。
 今回の研修会に参加された先生方のほとんどが、鑑賞に対する意識が大きく変わったと感想を残しています。県内から合計120名を超える先生方が参加され、それぞれの現場へ持ち帰ったことは非常に意義深いものです。
 今回は実際に子どもたちを相手に、どのようなやりとりを行うのか、また子どもたちはどのような発言をするのかを実際に見てもらうため、市内から5、6年生10名が協力してくれました。開始当初、背後にいる大勢の大人の視線に緊張気味でしたが、一つの発言がでると次々に発言が飛びだしました。アメリアさんが子どもたちの意見を聞くときの大きな特徴は、「おもしろい意見だ」「すごく直感的ね」などと必ず何らかの肯定的な反応を示すことです。発言内容が不十分だった場合には「どこを見てそう感じたのか」というように、観察や表現を更に深めるための誘導をします。他人の考えを聞くことによって自分の意見が発展する、ないしは自分とは違う意見だがなるほどと感ずるような会話の組立が非常に優れています。
 このような対話型鑑賞のねらいは美術の知識を深めるものではありません。物事をよく見て、考えて、言葉で表現するといったごく当たり前のことですが、とても重要なことを目的としています。
 今回は木下晋さんがこっそりと大人の中に混じって、子どもたちの発言を聞いていました。終盤、自画像でのやりとりが終わるとアメリアさんが「キノシタさん、どうぞ」と子どもたちに紹介するスペシャルもありました。
 自分の教え子が参加した先生は「普段では見られない表情や活発さがあり、生徒の知らない一面を見た」と話されていました。また「学校ではあまり発言できないのだけど、今日はたくさん発言できた」という子どももいました。
 国語、算数、理科、社会… 確かに学力は大切。しかし、そのもっと根底に必要な力は何をもって育まれるのか。図工や美術がその一部に重要な関わりをもっていることは疑う余地もなく、この対話型鑑賞が図工美術科目に新しいアプローチを提言しているものです。国語の時間にやってみてもいいくらいです。
 今回の研修に参加した先生の中に、失敗を恐れず授業の中で自ら実践する人が出てきて欲しいと思うと同時に、私たちはそのきっかけ作りに今後も学校とコミュニケーションを続けなければなりません。
 アメリアさんが最後に言ったのは「これはメソッドであるが、これが全てではない。皆さん自身がこれを参考に自分自身のメソッドを作ることが重要なこと」です。
 この鑑賞方法は何も子どもたちだけのものではありません。千葉県の川村記念美術館では長年の実績とボランティア・スタッフの熱意が実り、大人を対象とした「対話型鑑賞」も行われています。
 今回の研修会にご理解、ご協力いただきました多くの皆様に心より感謝申し上げます。

(学芸員 佐藤聡史)



 子どもたちの前に、大人が実際に対話型鑑賞を試みましたが…
 なにやら元気がありません


 最初は緊張気味だったけれど、一人が口火をきると
 ご覧の通り! 「家出したんじゃない?」、「何だかつらそう… 恐い夢を見ているみたい」 (鑑賞作品:木下晋の鉛筆画)

文教大学・浅見俊哉作のインスタレーションをぐるぐる回って。クラゲかな? とてもきれい

アメリア・アレナスの直接指導と質疑応答